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2011年味噌造り 【 味の記憶 】



 



 前回の記事で 店主の手作り味噌が
 名物の猪鍋の味を決める大切な役割を持っていると書きましたが
 数種類の味噌を合わせて作る猪鍋のタレのうち
 約6割を占めるのが、この手作り味噌なんです。

 先代の頃から郷土の伝統食として猪鍋を名物で出していた当館ですが
 店主が、この店を任され自分の味の味噌ダレを作ろうと思った時にまず考えたのが
 店主自ら作った味噌を使って猪鍋を作りたい という事でした。
 そこで これまでずっと手作り味噌を作り続けてきた
 今は亡き母方の祖母に講師をお願いして9年前の冬から味噌造りを始めました。

 私達の地域では、大豆と米麹と塩を材料にした味噌が主流で
 私が祖母から教わったのもそういった味噌です
 たった3つのシンプルな材料で作るので
 出来上がりも同じ物の様な気がするでしょうが
 【手前味噌】なんて言葉があるように同じ大豆・麹・塩を使って作るのに
 使う素材や、その配分など家毎に違った自慢の味があり
 店主が味噌を作っていると話すと、うちの味噌は自分の田でとれた米で麹を作っているとか
 うちは大豆の他にも落花生で味噌を作っているとか
 誇らしげに話す方が沢山いました
  
 そんな店主も最初は教わった通りに祖母の配合で大豆と麹と塩を混ぜていたのですが
 根が研究者型の店主ですからそのうち自分の味が作りたくなってきてしまいました(笑)
 そんな訳で5年目位から営業に使うものとは別に
 少しずつ配合を変えた実験的な味噌を仕込んで
 食味のデータを取ってみることにしました
 それでは これまでの試みとこだわりを
 皆さんに御覧頂きたいと思います。 

 【 塩分のこだわり 】
 塩分を少なくして作れば、同じ塩気の料理を作っても
 こだわりの大豆や麹の味がより濃く出るのではないかと思いました
 ですが塩分量を減らせば
 保存性という面でリスクが出てきます。
 そこで保存できるギリギリ塩分量を調べるために
 幾パターンも作って実験してみました
 麹菌が雑菌の繁殖を防ぐ役割がある様で
 麹の量も増減しながらのテストだったので
 なかなか大変でしたが
 仕込む際の器具や保存容記の殺菌を念入りに行い
 衛生的な仕込み作業を行い保管場所に気をつければ
 添加物を加えた市販の味噌と同じ位まで塩分量を減らせると解りました
 ※味噌の添加物も店頭に並ぶ期間に過度の発酵を防ぐという意味等
  解釈は色々あるようですね、一概に善し悪しの判断は付けられませんが
  入って無い方がもちろん良さそうです

 【 麹の量のこだわり 】
 大豆に対して麹の量を増やせば
 発酵によって麹が自然の甘味を醸してくれ甘口の味噌になります
 最初に この手作り味噌が猪鍋のタレの味の鍵を握っていると書きましたが
 猪鍋のタレの甘味を、出来るだけこの味噌の甘味で出したいと思い
 麹の比率の実験も幾度ともなく試みました。
 ※猪鍋用に始めた味噌造りですので 
  別に猪鍋専用の極甘口の味噌を作ってしまおうかと考えた事もありましたが
  ダシで溶いて味噌汁として成立する味を目指しました。
    
 
 【 味の記憶 】
 この数年間 大豆・麹・塩の配合のテストを行って
 昨年 やっと保存に適した塩分量が見つかりました
 今年は、いよいよ最終的な麹の量を決めたいと思い
 昨年の味噌造りの時に見つけた基準の塩分量で
 麹の量だけが違う数種類の試作品を作りました
 そして今年 その味噌のテイスティングをして

 「 これが一番美味しい 」と思ったもので今年の味噌を仕込みました

 そんな仕込みの日の夕方
 味噌蔵に並んだ樽を眺めながら途中で一息ついたのですが
 来年まで仕上がりが解らない味噌造りながら
 今年の味噌には強い手ごたえを感じました
 きっと【 自分の味噌 】と言える味噌になってくれると思います
 
 さて これで味噌の配合の実験も一段落ついた様なので
 今年は原点に帰る意味で
 最初にばーちゃんに教えてもらった通りの配合で少し作ってみようと思いました。
 
 事務所で味噌造りの資料をひっくり返してみれば最初に貰った
 ばーちゃんのメモが見つかりました。
 
 「 どれどれ自分の配合とばーちゃんの配合は、どの位違うのかな 」と
 ばーちゃんのメモの量を自分が一回に作る量に直して比率を計算してみれば
 なんと大豆の量・麹の量そして塩分量が
 ほとんど同じ配合でした

 何年も紆余曲折して辿り着いたのが 
 やっぱり ばーちゃんの味だったという事に感極まって、
 味噌作りの最中でしたが、恥ずかしながらぼろぼろと泣いてしまいました
 どんなに時間が経っても体が覚えている
 忘れ得ぬ味ってこういうものなんだとしみじみと思いました
 
 こうして店主の味噌造りは、9年目のこの日
 これまでにも増してずっと大切な存在になりました。
 ばーちゃんから受け継いだ味です これからもずっと守り続けて
 美味しいお味噌料理をお届けしていきたいと思います。 

 

自家製味噌3年物
↑3年物の自家製味噌
 新しい味噌のフレッシュで匂い立つ様な風味も良いですが
 女房と味噌は古い方が良いと申しますように
 熟成した味噌の旨味のまわった味もまた格別です
 当館の猪鍋には3年以上寝かせた物だけを使っています







  
 
 







 
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